2015/10/27 のログ
ご案内:「王都マグメール/広場 平民地区」にソードさんが現れました。
■ソード > 『世界で一番強い偉大な魔術師は、生涯で一度も負けた事がないのです。彼は言います。「僕はたくさんの魔族を殺した。」「僕は山のように大きな竜すら倒して従えた。」「吸血鬼なんて一捻りさ。」「麻のように乱れた問題も、僕が知恵を出せば瞬く間に解決さ!」
だから、みんな彼を尊敬していました。
「自分は世界で一番強い。もしかしたら同じくらい強い奴もいるかも知れないけど、でも自分はそいつらより強い。」』
(夕暮れ時。
平民地区のとある広場に響いているのは、人形芝居の語り声だった。
内容は、オーソドックスな人間の魔術師の武勇伝。幾人もの子供たちが、熱心にそれを見つめている。
そんな様を、男は少し遠くから見るともなしに見ていた。
幸いにして、耳はいい。眼も。
露店で買った串焼きを齧り、片手にエールを持って、黙してそれを聞く。
そろそろ、一幕が終了する流れ。)
『そう。偉大なる最強の魔術師は、生涯で一度も負けた事がなかったのです。
彼はその魔法の腕を尊敬する色んな人に、その偉大で思慮深い知恵を貸して感謝されました。
ある時は、短慮な戦士の愚行を諫めました。
ある時は、不幸な村娘に施しました。
ある時は、王に忠言する事もありました。
そうして彼は、世界中の人から感謝され、尊敬を集め続けたのでした。
―――終わり。』
(男の大雑把な耳で、何となく要約した内容を反芻する。
そこで、芝居は終わった。巻き起こる拍手。人形芝居の人形師は人気者だ。)
……アホくさ。その魔術師は結局……自分じゃ何もしてねぇじゃねぇか。
(男は失笑しながら、エールを煽った。
戦士のように実際に戦う事はしなかった。
貧しい村娘が生まれる状態をどうにかしようともしなかった。
王政に積極的に関わるでもなく時々口出しをするだけ。
それまで聞いていた他のエピソードのどれもが、そんな事ばかり。
『生涯無敗の魔術師』とは聞いてあきれる。
話を聞いていると、その魔術師はそもそもその物語の中で一度も戦っていない。
そのように自主申告しているだけなのだ。
男が苦笑じみた笑みを浮かべていると、人形師の男と目が合った。
彼はそれに気づくと、ニッコリと含みのある笑みを浮かべた。)
■ソード > (ヤロウ、わかっててやってやがる。
苦笑しながら、人形師の笑みを見つめる男。
その滑稽な魔術師の物語、演者である彼はキチンと分かってやっているようであった。
無邪気な子供たちだけが、その魔術師を尊敬している。
否、よく見ると子供たちの中にも、人形師の真意に気付いていそうな反応の者はチラホラいた。
面白いものである。
男は、ひょいひょい、とまだ肉のついた串を人形師に振って見せた。)
ま、武勇伝なんざそんなもんか。
(男は嘯いて、串に残った肉をすべて口の中へと。
グチャグチャと咀嚼していると、人形劇が再開するようだ。
次のエピソードは、『最強の魔法と小鬼』と言うらしい。また何とも皮肉がきいていそうなタイトルである。
つくづく最強が好きなんだな、と思うも、男は意識を人形劇から外して、広場を行く人々を眺める。
さて、次の仕事はどんなのがいいかね、と軽く欠伸を噛み殺しながら。)
―――っあー……。
あ、今夜の宿賃かー……。
(口腔内の肉を、残ったエールで流し込んでからそんな言葉を漏らす。
何と、この串焼きとエールを買ったので財布の中は底をついたのだ。
宿はとっていない。今夜どうすんだっけ、と男は頭をかく。
清々しい程にノープランノーフューチャーな男であった。)
■ソード > (肉のなくなったただの串を咥えながら、今夜について思い悩む。
くいくいと串を歯と唇で弄んで先端を上下させる動きは、まぁ子供じみた行儀悪さが滲む。
とは言え男は気にした様子もなく、腕組みしながら遠い目で考える。
気付けば視線は、人通りから茜の空へと移っていた。雲が流れてゆく。)
今からギルド行って、適当な仕事でも受けっかねぇ。
(嘯く。
今から、というのはつまり夜だ。
時間だとか何だとか、あまり男には関係ないらしい。気が向いた時に気が向いたようにする。よく言っても自由人、悪く言えば自堕落駄目人間な訳であるが。
口にくわえていた串を、空になったエールのカップへと移した。
どちらにせよ、宿賃がない以上は野宿確定なのだ。
であれば、橋の下で寝るよりは仕事に行ってしまった方がいい。
朝までにこなせる仕事ならば、そのまま夜通しで終わらせて早朝にギルドに寄ってから日中寝ればよかろう、と。)
それでいくかねぇ。
(嘯く。方針が決まって、視線を地上に戻した。
人形劇はまだ続いているようだが、もうあまり興味はなく。
きょろりと一度、周囲を見回した。)
■ソード > (串の入ったカップを持って立ち上がる。
一度、うーん、とノビを。
そのまま、ぐりぐりと腰を捩って、肩を回す。
一度、大きな欠伸が出た。)
―――ぁあ……。あー……さって、行くか。
(ごきごきと首を回してから、ぱしっ、と片掌で自らの片頬を張る。
そしてそのまま、のそのそと、悠々と歩き出した。
相変わらずの自然体。
まずは、エールのカップを露店に返してからギルドに行く。適当な依頼を見繕って受ける。
依頼がなければ、その時はその時。
相変わらずの調子のよさで、男はその場を去って行く。)
『結局、世界で一番強いその魔法は小鬼を倒す事ができず、その小鬼は一人の兵士の折れた剣によってあっさり殺されたのでした。
―――おしまい。』
(どこか皮肉な、人形劇の語り声がそれを見送った。)
ご案内:「王都マグメール/広場 平民地区」からソードさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区大通り」にアルフレイドさんが現れました。
■アルフレイド > 街道で山賊を派手にドンパチ繰り広げ数日
日中の間にギルドには仕事の達成と略奪品の返還。
騎士団には捕縛した山賊の頭を引渡し、今夜の宿も確保済みに準備した夜の大通り。
財布には報酬含め色々な意味で久しぶりの厚みと重さを感じる。
とは言え、それなりに無茶もしてる分装備の劣化も激しいと、新調がてら大通りの露店を物色しながら歩いてゆく。
「……んー…獲物はほっといても問題ないが、防具ねぇ…」
露店にはゴツいフルプレートやら、片腕じゃ持てなさそうなタワーシールドやら、脳筋御用達とでも言わんばかりな重装備が陳列されている。
見栄え的には良いのだろうが、限りなく軽装を好む男には魅力の欠片も感じる事が出来ず、オマケに表記された値段を数え更にげんなりと溜息一つ零れて。
■アルフレイド > 「……なんぞ魔物の革でも引っぺがして仕立ててもらう方が良いかもなぁ。」
ガチガチの金属鎧を身に着けてみるイメージをして数瞬――圧倒的に似合わなさそうな自身の姿に足元から背筋まで寒い震えの波が伝う。
無論それ以外も動きの阻害やら重量による機動力の低下やら思うのだが。
とは言え、並の剣でも斬れないほど丈夫で尚且つ動きの邪魔をしない素材となると思い当たる物が見当たらず。
「店主のおっさんよぉ、硬くて軽くて柔軟な素材って何か知らねぇ?」
とても馬鹿の子な問いを店主へと尋ねた。
無論、答えは
「そんな便利な素材そうそうあるはずがないだろう。」だったのだが。